外車・輸入車はなぜオシャレなのか?デザイナーの観点から

コラム
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外車・輸入車がオシャレに映る本質

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日本車・国産車に対するイメージのギャップ

「外車」と聞いて、皆さんはどんなイメージを持つでしょうか?洗練されたデザインと華やかなオーラを持ち、「カッコいい車」というイメージを持つ方も多いと思います。

「Yahoo!知恵袋 – みんなの知恵共有サービス」の中には、「日本車=ダサい」、「外車=オシャレ」について言及するものがたくさん見受けられます。

なぜ国産車は、外車みたいな、可愛いお洒落なデザインがあまりないんですか?

日本車=ダサいで あってますか。乗りたい車なんて一台もないです。

日本の自動車のデザインがダサい理由は何ですか。イタリアとか格好良いのに。

なんで日本車ってダサいんですか?

「外車・輸入車がオシャレ」という構造の裏には、「日本車・国産車がダサい」という印象が隠されています。しかし、これは必ずしも日本車が本当にダサいということではなく、デザインの仕組み上、日本国内で日本車を捉えると必然的にそうなるということです。

そこで、今回は「デザイン」の本質から、なぜ、輸入車がオシャレに見えるのかについて説明したいと思います。

デザインの法則1:国内における外車は未視感と非現実感でオシャレさを創出する

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車だけでなく、CM、雑誌、パッケージを見て、「オシャレ」だと感じるデザインに含まれているのは、「未視感」と「非現実感」です。デザインにおける「未視感」とは、「一般世界で何度も見過ぎていない」ことを指します。「非現実感」とは、「現実感を忘れさせるような感覚」です。

日本の中で外車・輸入車を見ることは、まさにこの「未視感」と「非現実感」を強く感じさせてくれます。

2014年の輸入車販売台数のシェアは8.8%。過去最高を記録しました。17年振りの高水準とのことです
引用元: 「実は1ケタ台?輸入車の年間販売台数を振り返ってみる|CARS]

数字からも明確に日本での外車が「未視感」と「非現実感」を強く感じることが分かります。

デザインの法則2:日本語表記か英語表記か

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例えば、上の車は、スズキのコンパクトSUV「イグニス」です。デザインとしては、批判されるものではありませんが、それよりも注目してほしいのがエンブレムです。スズキの「S」がエムブレムになっていますよね。

日本人は日本語を普段から使っています。なので、日本語は超現実感のある文字で、その文字がデザインに含まれると、野暮ったさを感じるのは言うまでもありません。ブランド物に言えることですが、外国の表記は未視感と非現実感があるから何かオーラを惹きつけられる方もいると思います。特に日産はそれが顕著に出ていると言えます。

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車を眺めていると、デザインの印象付けでエンブレムが持つ役割が非常に大きいように感じました。

デザインの法則3:頑丈な作りがデザインに重厚感を与えている

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言われてみれば当たり前なのですが、薄っぺらいデザインは安っぽさを与えます。一方、重みや厚みがあるものは、文字通り「重厚感」が出ます。デザインがどっしりして、オーラがあるように映ります。

輸入車は、ボディーやサスペンション、ステアリング周りが頑丈な作りになっています。ヨーロッパは高速道路が発達しているので、ハイスピードでも安全で快適なように、伝統的にガッチリとした設計になっているのです。

そのため、ボディから醸し出される重厚感、デザインオーラが国産車とはやはり違ってくると言えます。

外車・輸入車のデザインはクラシック化することを見越して作られている

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外車・輸入車のデザインは風化しないようなデザインに気を配って作られているものが非常に多いような印象があります。基本的に、欧州車は日本車よりもはるかに長い時間をかけて、デザインを熟成しています。デザインを細かく作りこんでいけば、時間が経てば、レトロスタイリッシュに映るように仕組まれた精巧なものが作れるのです。

モデルチェンジサイクルを見ても、日本車が約4年に対して、欧州車は約7~8年、さらに言えば、欧州車はモデルチェンジしても大幅にデザインを変えません。1つの車に掛けるデザインへの筋が通っているため、軸を保ったままモデルチェンジをするからです。

外車・輸入車は文化的に溶け込んでいくデザインについての哲学を日本車・国産車よりも感じるように思います。

外車と日本車でカーデザイナーをした和田智氏の視点

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日本車と外車のデザインの違いについては、カーデザイナーとして日産、アウディで活躍し、A5でのデザインで数々のアワードを獲得した和田智氏の以下の供述が大変興味深いです。

日産とアウディで仕事をしてみて、いろいろな違いに気付かされました。まずディレクターの考えがまったく違う。例えばアウディ時代、ワルター(・デ・シルバ)からは日産時代に言われた「売れるクルマをつくれ」というようなことは一度も言われませんでした。皆、とにかく美しいデザインを描くことに努めていたんです。野望もあったと思う。彼とA6、Q7、A5、A7などで一緒に仕事をしましたが、売れるかどうか考えたことはありません。もしも日本メーカーのデザイナーが”売れるためならなんだってする”と考えて仕事をしているとしたら、真逆と言いたいです。
引用元: 「「日本車とドイツ車」、デザインの決定的な差|東洋経済」

カーデザイナーはあくまでもカーデザイナーであって、会社の決裁権や裁量権を持った人間の発言や要望に沿って作ることが求められます。カーデザイナーが良いと思ったデザインをそのまま反映できるわけではありません。良いデザインの車を作るという観点で言えば、日本的企業体質では、いろんなことを配慮し、守りに入った挙句、小手先の予防線が詰まったトンチンカンなデザインになってしまう危惧すらあります。

最後に:「そもそもデザインとは?」を突き詰めると、そこは外見的な要素を超える様々な要素が含まれる

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外車・輸入車はなぜオシャレなのか、オシャレに見えてしまうのか、その構造が少しでもお分かり頂けたかと思います。日本で言えば、「車は家族で楽しく乗れるのが一番」という客層が多いのであれば、そのニーズを満たす車をデザインを作るとします。その際にデザインとは「設計」なので、「乗りやすい設計」「家族で長時間走行にストレスのない設計」など、「作り」を作りこんでいくのがデザインを意味します。

デザインにもいろんな概念や方針があるということを念頭に置いて、車を見ると、日本車や国産車でもダサい以外の新しい気づきを得られると思います。